「うげー、なんでブーツの中にパンツが入ってんだよ……ほんとパンツ屋敷だよなこの家」
意味が解らないから捨てておこう、と丸めたトランクスを引っ張り出したプロイセンは目下のところ下駄箱の掃除中である。
家主は例によって惰眠を貪っているが構うまい。ついこの間プロイセンの来襲を受けたばかりで、尚且つ今日も玄関の鍵を開け放しにしているのだから、これはもう勝手に入って掃除して欲しいという意思表示としか思えない。全く甘ったれなお坊ちゃんである。
そもそも坊っちゃんの浅知恵でこの俺様の目から隠し通せるパンツがあると思っ……やべ、じゃなくて、下駄箱掃除してやる俺様マジ親切だぜー。
誰も聞いていないモノローグ内で誰かに弁明しつつプロイセンが広げた下着を宙に翳したその時、がちゃりと唐突に玄関のドアが開いた。まさか泥棒か!?自分のことは棚に上げて警戒に満ちた視線を向ける。
「おいオーストリア!玄関の鍵を閉め忘れるなど無用心すぎるのであ…る……」
「よお、……」
オーストリアの家に入った途端、男物の下着を両手でしっかりと握った不審者をいきなり発見してしまったスイスは凍り付いた。
ぽかんと口を開けた間抜け面が徐々に憤怒の形相に変わっていく。あ、やっべ。わなわな震えるスイスを観察しつつ、他人事のようにプロイセンは判断した。
「きっ…貴様そこで一体何をしている!!?」
がしゃん!とライフルを構えるスイスは見るからに冷静ではない。こんなの俺とオーストリアの間では日常風景だぜ、と説明して納得させられるか…上手い口上を考えつつ一応(パンツを掴んだまま)両手を上げたプロイセンの背後から、ぺたぺたという室内履きの気の抜けた足音が聞こえてくる。幸か不幸かこのタイミングで、おそよう貴族がお目覚めになったらしい。
「朝からなんですか煩いですね……あら、スイス?」
プロイセンが手にしたブツに気付くより先に、物騒な幼馴染みの姿に疑問を抱いたらしい。つーかぺたぺたはねーよ戦う為に生まれた国どころか貴族の出す音でもねーだろソレ。呆れつつ背後に近付いてきたオーストリアを振り仰いだプロイセンは、スイスがドアを開けた時よりもギョッとした。
ちくしょうアングル的にオイシイじゃねーか。生っ白い脚を間近でガン見しているプロイセンを鬱陶しそうに押し退けようとしているオーストリアは、今日もシャツ一枚着たきりで下に何も身に付けていない。
「!プロイセン、また私の…」
「はっ、は、は……破廉恥である!!!!!!!!!!!!!」
顔色を限界値まで赤くしたスイスの絶叫が玄関ホールに響き渡った。