「きっとあなたの言う通りなんでしょうね。彼は私に好意を寄せているのかもしれません」
認めようとはしないだろうという予測は完全に外れ、オーストリアさんは俺を宥めるように眼を細め、呆気ないほど簡単に頷いた。でもそれだけだった。
「ですが、それが何だというのです?」
「え、……う、うんそうだね。オーストリアさんが兄ちゃんのこと好きじゃないなら」
本心ではプロイセン兄ちゃんが可哀想だと思ったけど、確かに一方的な感情は向けられる側からすると迷惑なだけかもしれない。あれだけ喧嘩ばっかりしてるんだからオーストリアさんは本当にプロイセン兄ちゃんのことが嫌いなのかもしれないし、俺だって別に、無理矢理好きになれ、なんて言いたいんじゃないんだ。俺にとっては二人とも大切な人だから、その、
「有難う。あなたは優しい子ですね」
「ヴェ?」
何百年にも渡る付き合いで、こんなことを言われたのは初めてだ。お小言は沢山貰ったけど。嬉しくなる前に淋しくなってしまう。
だって、この人にとって俺はもう、気を遣う必要のある他人でしかないってことだから。
「本心から私のことを好いてくださる方が存在すると、知ってはいるのですよ。同じように嫌っている方がいることも」
俺の見間違いじゃなければ、オーストリアさんもなんだか淋しそうだった。
「……どちらのことも、どうでもいいとしか思えないんです。私は少し変なのかもしれませんね」