「なあ、何でオレはこんなトコでこんなコトしてんの」
「私のベッドをこんな所呼ばわりとは随分な言い様だな、鋼の」
肘を付いて僅かに上体を起こしたマスタングは、ゆったりと余裕の笑みを浮かべた。
「男の気を惹く練習だろう?いや、君は何故だか男ウケが良いからそちらは必要ないのか」
「あ゛!?」
「練習台が私で良かったと思わないかね。手慣れているから三割減で痛くない」
「……あのさ、人体発火の原理って知ってる?」
「ははは、本職だよ」
二人は爽やかに笑み交わした。エドワードが機械鎧を変形させた刃を、マスタングが白刃取りしながら、ではあるが。
「正直なところ、弟の気は充分惹けていると思うが?」
辛うじて刃を押し返したマスタングが、真顔に戻って指摘する。
「駄目駄目。アイツ外泊しても何も言わねーし。この前の痕だって気付いてないんだか、……全く指摘して貰えないオレの気持ちが解るか!?」
言ってるうちにヒートアップするエドワード。
「いや…、『精気を養われたのですから仕事もはかどりますね?』と笑顔で嫌味を言われる気持ちなら理解出来るが」
「へえ、脈ありそうじゃん」
「……妙に嬉しそうだが嫉妬してくれないのかね」
「だってオレ達の場合はそーゆー関係じゃないだろ?なんか別腹ってゆーか」
あっけからんとエドワードが放言するのに脱力して、マスタングは少年を引っ張り込みつつシーツに突っ伏した。
「え、何?」
「今度似たような質問を弟にしてみてはどうだ?」
まさか先方も『別腹』だと思って嫉妬もせず放置してるんじゃないだろうな……。
全く共通点がない癖に変な所で似ている兄弟の気質を思い、マスタングはなんとなく虚しくなった。