「えーっ!!ビアンキと獄寺って姉弟なの!?」
どこかのツッコミ中学生を彷彿とさせる少年の叫びに、會てのツッコミ中学生当人は
「あれ、知んなかった?」
紅茶片手に何とも気の抜けたコメントを寄せた。年月はツッコミ役をボケキャラに変える力を持つらしい。
「初耳だよ!!」
ダンとテーブルを叩けば、卓上の食器が鋭い悲鳴を上げた。その分、普段は寡黙少年で通っている息子は人の変わったような勢いだ。
親子って似るんだな……。無表情の裡で、リボーンはほのぼのと懐旧に浸った。
「まあ、改めて言うようなことじゃないからなぁ。俺も知ったのは偶然みたいなものだったよ」
でも似てない?首を傾げる母に対し、息子は
「似てないよ!」
頬を膨らませる。蛇蝎の如く嫌う獄寺隼人と、奥向きを取り仕切る第二の母といったビアンキが血縁者であるなど、彼にとって堪え難いものがあるのだ。
「ビアンキ美人だし!獄寺みたいな藪睨みじゃないし」
「……ビアンキも怒ったら怖いぞ?」
「そうだけど!!」
とはいえ幾ら駄々を捏ねようが、事実が覆る訳ではない。散々怒りを発散させて気が済んだのか、光圀は眉間に皺を寄せて押し黙ってしまった。
そうするとザンザスに似てくる。本人は不本意だろうが獄寺にも似ているかもしれない。自分にも似た部分があれば良いんだがと、完全に平和ボケした頭で考えながらリボーンは珈琲を啜った。
「……俺、ビアンキはリボーンの姉さんなんだと思ってた」
「ぶ!?」
が、不意打ちで自分の名前を出され、危うく口中の飲み物を吹きかける。
「っゴホごほ」
「どしたのリボーン」
動揺の理由が解らず綱吉はきょとんとしている。
「だって母さん、昔リボーンに聞いたことあるんだよ。ビアンキと仲良いよねって俺が言ったら、他人じゃないからなって。だから俺てっきり」
「……………ふーん」
綱吉の笑顔はそのままだが、何やら凶々しくも恐ろしい気配が漂ってくる。場の緊張感を察知して、光圀も事情は解らないながら顔を引き攣らせて母と兇手の一方的な対峙を見守っている。って、誰の所為だこの餓鬼。
「昔付き合ってたのよ、昔ね」
救いの女神は追加の焼き菓子を持参して現われた。テーブルに置かれている、紫色に泡立ち謎の煙を発している自称マドレーヌを手に取ろうとする者は、勿論のこと最初から皆無だが。誰だって命は惜しい。
「び…ビアンキ、獄寺君の様子は?」
「医務室で魘されてるわ。全く、あの子の病弱にも困ったものね」
溜息を吐く姿は年齢を感じさせない美しさだ。魔女だが。
「あ、はは……」
常の遣り取りだが、綱吉の意識が逸れてくれたのは単純に有り難い。
「大人って何隠してんだか解ったもんじゃないよね……」
不貞腐れたようにテーブルに頬杖をついて、光圀は唇を尖らせている。リボーンは珈琲片手にノーコメントを貫いた。