典常の愛 至上の恋


※以下、北方謙三の小説である『三国志』(角川春樹事務所)についての
ネタとも感想ともつかない考察です。
多量のネタバレが含まれていますので未読の方、
また作品を愚弄されることが許せない方は
ご注意下さいませ。



V.オマケ。

はい、ここからは直接に曹荀論と関係ないツッコミというか。



が作者に重要視されていた証ですが、死後も同国人や他国人の口の端に彼の名が上ることが結構あります。
特に魏人にとっては、妙に伝説の存在になってそうな……。

、そして荀攸死後は傑出した人材が出現せず、文官が多人数でその穴を埋めているという設定になっているようです。
しかし曹丕時代から、実質的に陳羣が文官のトップに立っていると見えますね。
頑張ってお仕事している陳羣ですが、周りの評判や如何。

●司馬懿→陳羣
「かつて荀殿は、先帝がどういう戦をなされようと、なにも言わずに兵糧を用意された。あのころと較べると、いまは楽なものだと思う」(文庫12、p82)

●辛→司馬懿
「一応兵糧は調達するのですが、言葉が多すぎますな。戦の時は、黙って働けばよい。荀殿など、曹操様がいくら連戦を重ねられても、黙って兵糧を用意したものです」(文庫13、p301-302)

……別に仲が悪い訳ではなさそうなんですけど。口煩がられてますねえ。
しかし彼らの言い分を聞いている限り、荀殿は凄いお方のようですな。文官の鑑です。

では、そんな生前の荀さんの、貴重な証拠VTRをどうぞ♪


●例1
「やはり、決定的に兵糧が不足しております」
「なんとかするのだ、荀。(後略)」
「それでも、足りません」
「足りなくても、それでやるしかない」(文庫4、p70)

●例2
「兵糧はなんとかしろ、と言われるのですね、また」
「河北からは、ようやく税があがりはじめたばかりです」
「ひとつだけ申しあげますが、私は民政の責任も負っております。苛酷に税を徴収して、民政の不安を招くわけにもいかないのです」(文庫6、152-153より抜粋)


あの…………………。
めちゃくちゃ文句言いまくってると思うんですが?
これのどこをどう見て、黙って耐えてると思うのでしょうか、皆さん……。
まあ、こういった本音の会話を交わしているのは、どうやら曹操の私室で二人になった時に限られているようにも見えるので。他の人々には全く文句を漏らしていなかったということなんでしょうけど。

それにしても陳羣は可哀相というか。
若き官僚達にとっての荀像は、実状以上に美しくされてること甚だしいようです。そんなのと比べられても……ねえ?

まるで、「母さんはこんなことしなかったのに」とか死んだ母親を理想化して妻を詰るマザコンなダメ夫のようです。

魏国文官、マザコン気味か……。





更に蛇足ですが、曹丕の死に際して陳羣(軽く50過ぎ)が大泣きしてるのにイライラした管理人が、
「エエ年こいたオヤジがぴーぴー泣くんじゃねえよ、だから
だと言われるんだ」との暴言を吐いたことは……ええと、ごめんなさい(-_-;)
妙にインパクトがあったので、梓のオリジナルでも陳羣は涙もろいということになりました……(苦笑)。






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