ビデオ曹操伝雑感



T.まず。

先日(2002.09.01)レンタルビデオ屋で借りたのです、「三国志 曹操伝」(原題は「一代梟雄 曹操」)。タイトルには数年来惹かれていたものの、かつて観た三国志映画ビデオ(「三国志 大いなる飛翔」か?記憶は曖昧…)のあまりの期待外れさに「どーせつまんなかろう」と思い、敬遠していたのでした。
しかし、魏にメロメロな今夏のある日、「いや、借りないけどさ…」とか自身に言い訳しつつ棚を見に行けば、
……なんと借りられているではないか!!
「誰が借りたんだ!?ってゆーか借りる人居たんだ!!(超失礼)」
もしや、この作品は、実は面白いのか……??
恋と同じで、人は誰しも縋るモノを疎んじ、逃げるモノを追いかけたくなるものです。
短期旅行中に三国志から隔離されていた梓は、そのストレスもあって、帰還後すぐにそのビデオを借りに走ったのでした……。
結論、そんなに面白くないです。
身も蓋もないな……。



U.愉快ではあるんだよ。

……とまあ、最初から酷いこと言ってますが。(^_^;
そもそもあの長い歴史物語を2時間やそこらで描ききろうとすること自体が蛮勇なので、観る側が物足りなく感じるのも仕方ないのかもしれませんね……。BSドラマ(実は観てないのですが…)とか、せめて「三国志 諸葛孔明」(全7巻とダイジェスト3巻版があるらしいですね。結構良い評判も聞きます)くらいなら見応えもあるのかもしれませんが……。
と、そろそろ本題に入りましょう。
いや、色々ツッコミのしどころも多く、その点では愉快でした(悪)。198年時点で曹操が丞相呼ばわりされてたり(208年です)、顔良と文醜がやけに弱々しかったり、留守番してる筈の夏侯惇が赤壁にいたり、魏公をすっ飛ばして魏王になってたり、曹皇后の名前が何故か曹節じゃなくて曹芸になってたり、最後に出てきたキャスト一覧に出てない筈の小喬や姜維や馬謖の名が見えたり、色々謎は尽きません……。
各々のエピソードがぶつ切りなのもあり、ひょっとしてなんらかの作品のダイジェストじゃなかろうかとの疑問も持ちますが。
あと、やはり演義なので、赤壁の孔明が出番の少ない割に美味しい所を攫っててムカツキましたね☆ まあこれは諦めてますがー。
勿論、素晴らしい箇所もありました(フォロー)。
しょっぱなの陳宮処刑エピソードは泣かせますし、官渡での許攸相手の遣り取りも面白い。
この辺はそもそもの史実的エピソードが良くて、ちゃんとそれを形にして貰ったという満足を得られたと言うことですが。
それ以外に映画の演出としては、赤壁で曹操軍に突っ込んでゆく周瑜が華麗で、それこそ気絶する程カッコイイです(笑)。あと夏侯惇も格好良いし(なんかもう惇兄だと思うだけで格好良く見える病に…)。
ストーリー的には、黄巾の乱の解説から始まり、実質198年の呂布の死から物語が始まっています。そして、如何にも曹操エピソードを紹介しつつ官渡・赤壁と進み、朝廷問題に悩まされながら死を迎えるまでを駆け足で追いかけてるかんじです。
演義系にしては官渡に大きく時間を割いているのが、「曹操伝」の面目躍如といったところでしょうか。
前半は関羽との奇妙な片想い関係(笑)、後半は曹操の娘でありながら漢王朝存続の為に立ち塞がる曹皇后との葛藤が主軸になっているようです。
相変わらず関羽にラブラブな曹操さま。呂布配下だった張遼を今にも処刑しようとしていて、関羽が止めた途端にコロリと態度を変えてスマイル(笑)。文遠どのが騙されてる…っていうか、関羽に媚びたい下心バレバレだっつーの……。
関羽が投降してきた時の歓待ぶりも泣かせます。
赤兎馬を欲しがり、あまつさえその理由が「速く玄徳の兄者の元に駆けつけたいから」だという関羽に引きつり笑いを漏らし、敢えて聞こえない振りをしてあげちゃう曹操。
いじらしくて可愛いオヤジですね、もう。
吉川じゃないですけど、関羽に対する曹操はやっぱり恋する乙女です。
そしてやっぱり怒ってる夏侯惇(笑)。華陽道で伏兵の関羽に見逃して貰おうと、敗残の曹操主従は集団泣き落としをするのですが、……よくもまあ(間違って従軍した)夏侯惇に出来たものです。
案の定、虎口を逃れてから「なんで戦わなかったんだ」とぶーたれてますが、先程までのしおらしさをかなぐり捨てて偉そうな曹操がまた、可愛い(笑)。
そして後半。曹皇后は、後半の主役の座を半ば奪ってました(苦笑)。漢中戦とか「鶏肋」エピソードとかが見たかったのに。
結構娘にはメロメロなお父さんっぽかったのが、伏皇后の処刑の際に感情が拗れて恐ろしいことに。
なんか、曹操の直接の死因が彼女の罵声っぽいのですけど……(汗)。儒教社会的にそれはどうなのよみたいな気もしますが、事実彼女は曹丕が即位するのに反対してましたからねえ。態度的には間違っちゃいないんですかね。
そして、お父さんの居ない所で密談してる曹丕と司馬懿が素敵(笑)。
帝位を奪うぞ、とか暗い中でちょっと蝋燭ともしてひそひそやってるんですよね。なんてあの人達にぴったりのシチュエーションなんだ(大笑)。
とっても似たもの同士でお似合いな、陰険主従です(絶賛)。



V.青い文官の怪

青い文官。それは、曹操の傍らに常に控えている中年の文官のことです。
都でも陣中でも、ことあるごとに曹操の側に控えてるこの男。曹操が関羽と遠乗りに出かける時にもちゃっかり仲間に入っていたり、正体不明ながらもなかなかに侮れないオヤジでした。
そう、……アンタなんだよ
アイパッチな夏侯惇などの特殊例を除き、基本的には似たようなオヤジが大量にウロウロしている映画なので、服の色くらいでしか見分けがつきません。時々曹操さまは部下に名前で呼びかけるので、その辺にいるオヤジが誰なのかようやく判るのですが、この人物についてはなかなか口を滑らせてくれませんでした。
父の予想ではなのでは、と。
曹操の傍らに常に侍ってる文官すなわち荀との認識は大歓迎ですが(笑)、世の中そんなに甘くない。夢を見ていてはなりません。
青い文官が初めて何らかの意味あるリアクションを起こしたのは、劉備の逃亡において。
袁術討伐に行かせたという曹操を叱る役回り、ということは……私は、郭嘉ではないかと予想しました。
劉備を曹操に殺せと言っていたのは荀と程。そして劉備が都を出たと聞いて曹操を叱りつけたのが程と郭嘉。
この三者の内、従軍してる曹操の腹心といえば郭嘉でしょう、と。
謎が解ける日が来ました。
とうとう青い文官に声をかける曹操。

……やられた―――――――――!!!!!煤i ̄□ ̄;)
そうだ、そりゃそうだ。条件ぴったりですけど!
しかし、荀と郭嘉の両人ともが、一度たりともちゃんとした役で登場しない曹操モノって、アリなのですか……?

まだまだ、私は夢を見過ぎていたようです……。





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