しらじらとした陽の織り出す影は、午後のそれよりも薄いように思われる、朝。
主立った部署の責任者が一堂に会する朝議の後も、それぞれの部署で働いている官吏が細かい方針を確認する為、入れ替わり立ち替わり国家要人達の使用する執務室を訪れるのが常であるのだが。
「今日からおぬしらと共に働いてくれる楊ゼンだ。仲良くしてやってくれ」
「……楊ゼンデス。よろしくお願いシマス……」
執務室中の注目を一身に浴びながら、季節外れの転校生のような扱いを受けた楊ゼンは自棄になったように頭を下げた。
下げて、がっくり、そのまま項垂れる。
「――どういうことですか太公望」
こめかみに青筋を浮き上がらせ、周公旦は太公望を睨め付けた。手にはハリセンをスタンバイ。
「楊ゼンさんは要塞の報告に来たのだと記憶していますが?」
「うむ。順調らしいぞ?」
全く悪びれた風もなく、太公望は大きく頷く。
「でしたら……」
何らかのフォローあるものと思い天才道士に鋭い視線を向ければ、、居たたまれなさ気に佇む楊ゼンは明後日の方向に視線を逸らす。
後ろ暗いところがあるらしい。
確信して、旦はますます眉尻を上げた。
「だからだ。向こうが順調なら、今は人手不足の此方を手伝わせた方が能率も良いだろうが」
「………」
不運にも居合わせていた官吏数人は、宰相の無言の怒りを感じて顔を蒼くした。
しかし、爆発寸前の周公旦を気にすることもなく、太公望は調子に乗る。
「わしはこの通り重病人でのう、とてもではないが、仕事など出来ぬのだよ……」
頭に手をやり、大げさにふらつくのを。
「嘘おっしゃい!!」
スパ――ン!
「ぶふうっ」
ついに堪忍袋の緒が切れた周公旦のハリセンが、アホ軍師の横っ面に炸裂した。
思いっきり吹っ飛ばされ、壁に激突する。
勿論、誰も同情しなかった。
「……あ」
筆から滴り落ちた墨が、竹簡の上に黒い染みを作った。
じわじわと丸い円が広がっていくのを何とかしようとする間もなく、首に圧迫感を感じる。
「即刻書き直せ、ダアホ」
背後から、楊ゼンの首にエルボーを掛けているのは太公望。多少苦しいが非力な軍師様のする事、戦士として耐久力にも自信のある楊ゼンは支障なく筆を持ち直す。
「おぬしがさっさと書かねば、武吉達が要塞までおつかいに行けぬではないか」
判ってやっているのか、ぐいぐいと攻撃を加えつつ太公望は言い含めるが、その言葉に激怒したのは傍で待機していた四不象の方である。
「御主人!誰の所為だと思ってるっスか!?楊ゼンさんが可哀相っス!!」
その言葉は、今したためているのが楊ゼンの帰還が遅れる旨を知らせる書簡である事実を指しているのだろうが。
判っていながらも、思わず楊ゼンはぎょっとした。
「鬼っス!悪魔っスよ!!」
「五月蠅いうるさーい!!」
そんな楊ゼンの気も知らず、ぎゃいぎゃいと言い争う主従。
羽交い締めにしたままなので、太公望は楊ゼンの耳元で喚いている事になる。それこそ五月蠅い。
五月蠅いのだが、太公望からの身体接触が嬉しくて文句も言えない辺り、自分でもつくづく情けない楊ゼンである。
「師叔……、あの、書けましたけど?」
低レベルな口論を続ける太公望に、聞いてくれるか覚束無く思いつつも声を掛ける。
攻撃を止めた手が無言で催促するまま、腰の低い天才道士は糸で一綴りにした竹簡を渡した。
「おらおらとっとと行って来んかい!!」
受け取った上司といえば、それを四不象に放り投げ、しっしっ、と足で犬を追い払うような仕草をする。
「ああっ!僕は情けないっスよ!!楊ゼンさんが世を儚みたくなる気持ちも解るっス!!」
態とらしく悲嘆に暮れる四不象を無視して、太公望は武吉の方に顔を向けた。不毛な口論には参加せず待機していた武吉は、彼らの傍らでにこにこと笑みを浮かべている。
「ではのう、頼んだぞ武吉」
「はい!!お師匠様もお風邪を早く治してくださいねっ!!」
「うむうむ、おぬしはよい子だのう」
なでなで、太公望が小さい子にする様に頭を撫でれば、武吉は面映ゆそうにする。
至極真面目に太公望の仮病を信じているらしき武吉の様子に、楊ゼンと四不象は思わず顔を見合わせる。呆れとも同情ともつかない苦笑を交わせば。
「なんなのだ!?」
目敏く二人の表情を見咎めた太公望は、楊ゼンの頭を両手で掴むとあらぬ方向を向かせた。そのまま無駄のない動きで四不象に蹴りを入れる。
「いっっ」
むち打ち症を起こしそうな無理矢理の暴挙は、はっきり言ってエルボーより痛い。
「酷いっス!周公旦さんに殴られた八つ当たりっス!!」
「じゃあ行って来ますね!!」
流血の惨事を怖れたのかどうかは朗らかな笑顔からは判断出来なかったが、泣き真似をする四不象を引きずるようにして武吉は執務室を後にしていった。
ぱたん。
部屋が静まり返るのと同時に、太公望は楊ゼンの頭から手を離す。
首をさすりつつ楊ゼンも別口の書簡に取り掛かった。
そのまま楊ゼンの運んで来た肘掛け椅子に腰を下ろすのかと思いきや、太公望は無言で副官の仕事ぶりを観察している。いや、監視か。
周公旦は別の部署まで指示を出しに行っているし、姫発はその直後に脱走した。
夢にまで見た二人っきりのシチュエーションは、……こんなに気詰まりなものだったか?
「……何かお気に召さないところでも?」
背後からの無言の圧迫に耐えかねて、 楊ゼンは恐る恐る声を掛けたが。
「おぬし、ヘッタクソな字だのう……」
開口一番にそれ。
「っ!これは師叔の字を真似してるんです!!」
流石にむっとして顔を上げれば。
「あ――っ!?」
ぼたり。
今度は治水計画の案件の上に、墨を零してしまう。
「いやに今日はどんくさいのう……」
叱る気も失せたのか、太公望は呆れた声を出した。
確かに、そうかもしれない。自分でも嫌になって、楊ゼンは溜息を吐く。
昨夜から、殆ど一睡もしていないのだから。
何とか自殺は思い止まった後。
見てしまった衝撃生映像が何を意味するのか、それこそまんじりともせずに考えて考えて考え続けて。
「ご褒美はいらんようだのーう」
仕事の手を止めてフリーズしたままの楊ゼンの耳元で、揶揄する様に太公望が呟く。
それにも煽られて、楊ゼンは勢い良く背後の人を振り仰いだ。
「師叔っ!!あっ、あの、太乙真人様のアレ、診察してたんですよねっ!!?」
蜃気楼から結婚詐欺まで思い付く全ての可能性を考慮して、なるべく冷静に出した結果がこれである。
にっこり。
縋り付く様な楊ゼンの眼差しに、太公望は綺麗な笑みで応えると、
「お医者さんごっこかもしれんがのう?」
とどめを刺した。
…………。
楊ゼンは、静かに落涙する。
……しかし、一見無邪気な単語に胡乱な響きを感じてしまったのは、楊ゼンの責任というものかもしれない。
何となく昨日の姫発を思い出した。
このカンヅメ状態は、ある意味それに近いのではないだろうか?
いやしかし、仏頂面のハリセン野郎と二人っきりよりは、愛する人と一緒の時間を過ごす自分の方が恵まれているとは言えるだろう。
儚い慰めに僅かなりとも心癒され、楊ゼンは苦笑を漏らした。先程から妙に大人しい太公望の様子は窺えないが、少しくらい休憩しても怒られないだろうと判断して筆を置く。
――なにしろ今朝から働き通しだったのだから。
太公望が決裁しなければならない書類は雪崩を起こさんばかりに積み上がっていたし、上から指示を出さねばならない種類の仕事もある。
よく目を通せば、特に急ぎでもない仕事までが回されてきているのに気付いたが、この機会にとことん楽をしようという太公望の意図が明白すぎて、笑う他ない。
その上、茶を入れに席を立つ事6度。
街までおやつを買いに行かされる事2度。
肩をお揉みする事1度(こっちがやって欲しいくらいだ)。
「あれも頼む」「これも頼む」「わしは病人なのだー」、正に言いたい放題で、そのくせ余人の居ない隙を見計らって触れようとすれば大仰に嫌がる。
仕事も、ちょっとでも手を止めれば背中にケリが飛んでくるし……。
僕、何か嫌われる様な事したっけ?
「あれ?」
そこまで考えて、今回に限ってケリが入らない事に不審を覚える。
「師叔?」
何となく心配になって振り返れば、大人しいのも当然。
す――っ…。
安らかな寝息を立てて、太公望は肘掛けに寄り掛かって眠っていた。
「全くもう、いい御身分だったら……」
その声に棘はない。
「仰って下さらないと、それこそお風邪を召すでしょうに……」
椅子から立ち上がると、楊ゼンは自分の肩布を太公望の上に掛けてやった。
起きている時には才気走った老獪さの滲み出る太公望の貌も、こうして眠っている姿を見れば幼子の様に愛らしい。幼子にしては、表情に疲れが見えるのが余計に痛ましかった。
うん、今日一日くらいは休ませてあげられて良かった……。
先刻までの不満は何処へやら、楊ゼンは苦笑を浮かべつつそんな事を思う。
頭巾から零れる前髪を掬うと、さらさらとした手触りが気持ち良くて。
「良い夢を……」
そんな祈りめいた言葉を紡ぐ声も。
柔らかく、甘い。
「ふえっくしょい!!」
「リテイクだ馬鹿者」
盛大なくしゃみと冷たく言い捨てる声が、図らずも重なった。
鼻の下を擦る楊ゼンを気遣う訳でもなく、目を通していた書類をべっと投げ捨てるのは太公望。
「言いたい事の趣旨が判りづらい。下の者が皆おぬしの言いたい事を汲み取ってくれるとは限らんぞ」
尤もな言い分だが、もう少し思い遣りを見せてくれても良いのではないだろうか。
「なんだぁ?風邪引いたのかよ?」
代わりに姫発が気遣わし気に声を掛けたが、野郎に心配して貰ったところで嬉しくも何ともない。……太公望の性別を忘れている楊ゼンである。
夕方、うたた寝から目覚めて以来、太公望は俄然生き生きとしていた。
楊ゼンの仕事のチェックをやり始め、気に入らない箇所には文句をつける。
だったら自分でやれば良いようなものだが、今日は意地でも仕事に手を付けない誓いでも立てているのか、手伝う素振りすら全く見せないのには閉口した。
「ご褒美はいらんのか?」
……可愛い顔をした上司は、悪魔かもしれない。
寒気を感じつつ、楊ゼンは身震いする。
いや、太公望が怖いのではなく、実際肌寒いのだが。
肩布を貸したのがマズかったのかもしれない。
ちらと視線を向けても、太公望は肩布を羽織ったまま仁王立ちしている。うたた寝から目覚めた後も、返してくれないのだ。
ふぅ……。
「アンタも可哀相だよなあ……」
溜息を吐けば、姫発が同情に満ちた眼差しを送る。
煩い弟の目を盗んで脱走し、発見され暴走する象から逃げ惑った挙げ句敢え無く捕獲され、ハリセンを浴びてから再び執務室まで引きずって来られても、そこだけ時が止まったかの様に楊ゼンは筆を走らせ太公望はサボっている。
姫発にとって、今日の執務室は悠久の空間だった。
「いえ……」
自分の方が余程病人の様な顔色の悪さで、楊ゼンは言葉少なに応答する。
「この程度の仕事、わしだって毎日やっとるっつーの」
ぶちぶちと太公望がこぼすが、冷たい眼差しを送る周公旦の存在に気付いて押し黙った。
今朝のハリセンは余程堪えたらしい。
「っくしゅ!」
その沈黙を吹き飛ばして、またもや楊ゼンはくしゃみをした。
心なしか頭も痛くなってきた……。
いっそリタイアしてしまおうか?うん、これだけ頑張ったんだし、構わないよね。
都合良く自分を納得させた楊ゼンは。
「すー……」
「楊ゼン?」
席を立とうとして、観察するかのような太公望の瞳にぶつかる。
その眼に不機嫌な色はなく、面白がる様子ばかりが浮かんでいる。
楊ゼンは口を閉じた。
(いつ止めても良いのだぞ?ご褒美の接吻が欲しくなければのう)
瞳が、そう言っている。
……執務室に向かう前、無人の回廊で太公望から提案された事。
楊ゼンが昨日の事を問い質そうとする前に、彼の口を手で塞いた太公望は先手を打った。
『今日一日、わしの代わりに仕事を片付けてくれれば、昨日のは教えてやろう。接吻のおまけ付きでな』
にっこりというよりニヤリといった方が良い笑みで、太公望は笑いかけた。
塞がれている唇に柔らかな手の感触が伝わって、思わず楊ゼンは頷いていたのだ。
一度受けた勝負を下りるなど、男が廃ろうもの。
それに、楊ゼンが勝負を下りた場合、太公望は何があっても太乙との事について口を開こうとしないだろう。彼の人の性格について、楊ゼンにもそれくらいのことは容易に見当が付いた。
一抹の不安を残したままで、これから先向き合っていくのは嫌だから。
今無理してでも、頑張らなくてはならない。
眩暈を堪えて、楊ゼンは再び筆を取り直す。
と。
「やっほ――――♪お薬の時間だよ―――ぅ」
大きな音を立てて執務室の扉を開けると、場違いな程に陽気な声を上げたのは。
「太乙真人様……」
まだ居やがったのか、こいつ。
縁起の悪い顔を見てしまった楊ゼンは眉を顰める。なにやら扉の外には機械らしき物が置いてあるようだが……。
「おお、ご苦労だのう」
明るい太公望の声がして、楊ゼンの観察眼は急に鈍った。
「師叔!?なに嬉しそうにしてるんですか!?」
「あはは、食前30分ってこのくらいかな?分刻みで行動するのって疲れるねぇ」
「おぬしは時間概念がボケ過ぎだ」
気色ばんで立ち上がるが、両者には無視される。
太公望は楊ゼンの傍を離れると、すたすたと太乙の目の前まで歩み寄った。
姫発と周公旦は、楊ゼンのように怒る理由も表立ってはなく、事態を静観している。……その様子を片目で確認して。
「で、薬は?」
太公望は首を傾げる。
……それが合図だった。
「うん、そうだった。じゃ、口開けてー」
脳天気に笑うと、太乙は頭を下げた。
太公望は、爪先立つ。その腰を太乙が支えて。
お互い顔を寄せ合って、目を閉じる。
接吻。
としか思えないのだが。
「……………っっ!!!??」
顔を赤くしたり蒼くしたり忙しい姫発。
絶句している周公旦。
そして。
「…………………きゅうっ」
どさり。
重い物体が倒れる音を確認して、太公望は触れ合っていた唇を離した。口元を袖口で、きつく拭う。
口中にある、風邪薬の入ったカプセルの存在を確かめ、迷わず嚥下した。カプセルは溶け難い材質だったが、その内効果も出るだろう。
振り返れば、俯せになって床に転がっている男一人。蒼い髪が滝のように流れていて、綺麗かもしれない。
思いつつ、足先で蹴り転がすと赤い顔に出会った。
矢張り熱を出していたらしい。今のショックがトドメだったか、気を失っている。
「………ぷっ」
「っ!お、おい!太公望、今のは…!?って楊ゼンの野郎は……え?え!?」
混乱している姫発の声を意識の片隅で聞きながら。
…………
「っどわっははははははははははははは!!!!」
太公望は爆笑した。
「っくくくくくく、は、腹が捩れる………っ」
「いやー、あっさり引っかかってくれるんだねぇ……ぷっ」
太乙の感嘆も、笑い混じり。
「って………あ………?」
「わはははアホめ、風邪引きに一日中べったりくっついとったら感染って当たり前だわ!!」
「あ……、お前、本当に病気してたのか……?」
てっきり仮病だと信じ込んでいた姫発が、気まずげに頭を掻く。
「あー、だいじょぶだいじょぶ。今もよく効く薬飲ませたし」
「紛らわしい……」
周公旦の呟きは、正当なものだろう。
それを無視しつつ、太公望はやっと姫発を顧みる。
「そうだぞ、安心せい!」
ニヤリ。
「こやつに感染してやったから、わしは快癒した!!」
勝ち誇ったように宣言する。
「それって迷信だけどねー」
太乙の茶々も綺麗に無視して。
「いくらこやつが天才だと言うても到底わしには敵うまいて。精々形代に利用させてもろうたわ」
泣く子も黙る天才道士に対し、まじないの紙人形程度の価値しか認めないとの暴言。楊ゼンに想いを寄せる仙女や女官達が聞いたら、総スカンは必至だろう。
幸いこの場所には楊ゼンのファンだという人間も居なかったので、太公望は安心して転がっている楊ゼンを見下ろす事が出来た。
「ますますもって哀れな……」
ファンではなくとも同情を込めた姫発の呟き、すら無視する。
いい加減笑い疲れたのか、ややテンションの下がった太公望は背後を振り返った。
「ほれ太乙」
「あいあいさー」
ずっと年若の弟弟子に顎で促されるのに気を悪くした風もなく、太乙は隠し持っていたリモコンを操作する。
がしゃんこがしゃんこ、軋んだ音を立てて扉の影から現れたのは、人の腰までに満たない小型のロボットのような機械。黄巾力士を小さくしたような、丸っこいフォルムと愛想のない顔をしている。
そのミニ黄巾は腕を伸ばすと、二つしかない指で楊ゼンの襟首をむんずと掴んだ。
抱え上げるでもなく、そのままずるずると引きずってゆく。
顔が擦れているに違いない。痛そうだ。
「……ま、まあ仙人界の薬ならすぐ治るんだろ?」
「こやつに分けてやる薬などない」
あっさりと、太公望は断言する。
「うわ、ひで……」
心から気の毒そうにする姫発に、太公望は今までとは違う笑みを向けた。
「その代わり、わしが手厚い看護を加えてやるよ?」
表情の読めない、意味深な笑み。
そのまま、太乙の手からリモコンを奪い取って執務室を出て行く。その後を追うように、ミニ黄巾も楊ゼンを引きずりつつ退室した。
ごん、という鈍い音がしたが、敷居に頭をぶつけたのだろう。
物凄く痛そうだ。
皆は、しばらく無言で見送っていたが。
ふと我に返り、開いたままの扉を太乙は閉めに行く。
扉の外を覗いてみたが、宵闇の迫りつつある回廊には、既に二人の姿は見当たらなかった。
楊ゼンの部屋にでも向かっているのだろう。
「なんだかんだ言っても羨ましいよなあ、楊ゼンの野郎……」
「あ、やっぱりそう思う?」
畏怖と羨望を込めて姫発が呟くのに、太乙はにこにこと相槌を打った。
尤も、実際にああいう愛情表現をされるのは姫発とて御免だろうが、との言葉は内心に留めておく。
そっと、名残を惜しむように唇に指を当てた。
「―――〜〜っ、結局サボりましたね太公望〜〜〜〜っっ!!」
そんな中、現実を見据えているのは周公旦独りだけである。
明日もハリセンが炸裂するだろう、……それだけが確かな事だった。
〈完〉
今のワタクシの感想。
「え?こんなに楊ゼンが愛されてて良かったっけ??」
……いえ、ホントに。
疲れた時は、甘々ラブラブ楊太を読んで「畜生楊ゼンの奴、イイ思いしやがって〜っ!」と、怒りを駆り立てて書いてました(死)。
でも楊ゼンのことは好きですよん♪ちょっぴり情けないくらいが可愛いと思うのですが如何でしょうか?
この後楊ゼンは、太公望のイジメもどきの看護を受け続ける事になるのでしょう。激甘おかゆ食わされるとか、意識不明の間に顔に落書きされるとか。
ああ、羨ましいです……(ホントか?)。
なんだかんだ言って、師叔も楊ゼンと一緒に居たくて、引き留めようとしてるのですね、……多分。
か、風邪ネタだー!!と心に決めたのは、実際に久々に会った友人二人から風邪を感染された時です(怒)。
ネタを提供してくれた彼女達にも、感謝を(^-^#)
そして、心躍る素敵なリクを下さいましたねこ様。
あやふやにしか達成出来ませんで、本当に済みませんでした。
そして、有り難うございます。(^▽^)
リクというより、自分で楽しんで書いてしまいました(笑)。
取り敢えずリク消化期間、楊太編は一旦ストップですね。
ちょっと楊太でない話がこの後は続きますかねぇ……。
内、身内からリクされた二つは、まだネタも固まってないし後回しにしてしまう可能性もありますが(苦笑)。