「んふっv」
すかさず飛び退く普賢。
楊ぜんの手にあるエセ禁鞭が、三尖刀に姿を変える。
「何の御用ですか、普賢師弟。」
「や〜んv楊コちゃん、顔こわぁいっ。」
にこにこスマイルで楊ぜんに近づいていく。
普賢に四歩の距離を取ったところで三尖刀を天使の微笑に突きつける楊ぜん。
「…………。」
普賢の笑みが一層深くなる。
そして一気に間合いを詰めると、楊ぜんの首を抱く。
そのまま引き寄せ、楊ぜんの唇に自分の唇を押し当てた。
楊ぜんは突然のことに、呆然。
その手から三尖刀が滑り落ちた。
普賢は楊ぜんの唇を何度も吸う。
ちゅっちゅっ、と小さな音を立てながら。
次第に舌で舐めだす。ぺろぺろぺろぺろ。
そのまま楊ぜんの口内に自分の舌を滑り込ませる。
舌先で楊ぜんの舌を絡み取る。
味わうように楊ぜんの舌を自分の舌で弄ぶ。
何が何やら、どうしたもんかなの楊ぜんはなされるがまま。
思わず普賢の背中に手を回した
その時、唇に激痛が走り、反射的に体が仰け反る。
普賢が楊ぜんの唇に牙を立てたのだ。
楊ぜんの下唇に血がにじみ、それは粒になってポタポタ垂れた。
どんどん血があふれてくる唇を袖口でぬぐいながら、普賢を見る楊ぜん。
唇の痛みで「睨む」にはならないほど弱い目つき。
痛みは治まるどころか、どんどん増す。
そんな楊ぜんに、ふわっと微笑んで天使は口を開いた。
「望ちゃんは僕のものだよ。」
回れ右をすると、楊ぜんを背にしたまま
「邪魔をしないで。」
と放つ。
その言葉にいつもの天使のような甘い響きはなく、悪魔のように憎しみに満ちた声だった。
髪をすっと流して、普賢は引き上げる。