☆CLASSICS(古典)
…お奨め、ではなく基本かもしれない。
一応日本語訳されてるブツばかりです。
正史『三国志』 |
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何を置いても基本の、元祖三国志。 ■ちくま版は、日本唯一の完訳正史。誤訳・恣意的な翻訳との噂を聞きつつも、学者でない身にはどれ程有り難いことか。神。 8巻巻末の年表や官職表、人名索引、地図、何を取っても有り難い。一冊1500円と文庫にしては破格のお値段ですが、持ってて損じゃないと思いますねえ。 全巻セットで取り寄せたら箱に入ってやってくる(と思う)ので、尚嬉し。ペラい吉川幸次郎の『実録〜』ならギリギリ入るので、ちくまセットの出来上がり。 ただ、紀伝体は個人に着目するには楽ですが、同一事件における各人の連動は解りづらい…。 ■徳間のは「中国の思想シリーズ」の系列。正史三国志を中心に、一部後漢書や晋書、世説新語なども加えつつ、大体時系列に並べ直しているという体裁。 勿論完訳でないのであちこち手が届いてませんが、漢文・書き下し文・訳文・解説が全部載ってるので、元の記述を見ようと思ったり、カッコつけて漢文で引用したくなった時には大層便利(笑)。 しかし、そもそも時系列順に書いてないものを並べ直しても、どうも不自然だったり…、どこに何が載ってるか一目では判りづらいし。 ただ、何種類かの訳を見比べるのは、ちくまのを全面的に信用出来ない以上はやっといて損ないかと。『三国志集解』見るまでは要らないでしょーけど(中国語苦手…)。 こっちも人物小事典とか年表(別巻)、官職一覧や地図(1巻挟み込み)ありますけど、使いやすい分詳細さには欠けてたり。 ■平凡社も古典シリーズで三国志の抄訳出してますけど、あれは読むに値しないような…。記述はほんのちょっぴり。 |
『後漢書』 |
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私は明徳のしか持ってないんですが、三国迷的には読んでもあまり意味がありません。非オススメ。 曹騰は載ってたのが唯一の取り柄というか。清流vs濁流、外戚vs宦官的なところにスポット当てすぎな抄訳。 現在完訳が岩波書店(吉川忠夫 訓注)と汲古書院(渡邉義浩他 編)から続々出版中なので、それの完結を待ちましょう。 現段階('03.4)では両者とも4巻まで刊行。列伝20くらいまでだが、荀淑とかの清流名士おじいちゃん世代は列伝52、孔融や荀伝は列伝60なので、道程は遠い……。 列女伝には陰瑜妻として荀采(荀爽の娘)が出てきますが、それに至っては列伝74。 一冊1万前後するので全巻手元に置くのは難しいですが、三国志ファンとしては必須だったりする辺りが泣ける……。 |
『世説新語』 |
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実は裏魏に手を染める場合、演義よりネタ的にはオイシイ、六朝士大夫群像エピソード集。 学校図書館で借りたり立ち読みしたので、記憶がやや劣化……。 ■井波のは「鑑賞中国の古典」シリーズ。幾人かの小論文とかも載ってて、世説新語そのもののお勉強風味。 中身は井波氏の恣意による取捨選択があるが、訳の後の解説文が面白い。うん、「訳本」というより、「解説書」に限りなく近いというか。 『世説新語』自体には載ってない周一族の悲劇とかも紹介されてて、読み物としてかなり面白かった。 当時の美形観とかも判明vv ■明徳は、薄い例のシリーズ。関係ないが、PHP文庫『張良』の参考本に載ってる古典がみんな明徳ので、「ダメだこりゃ」。 やっぱり一部のみの抄訳だが、何故か荀・陳一族のラブリー家族交流説話が入ってたので(井波のはなかった)嬉しかったり……。 ■完訳…?なんでしょかね、これ。一部を立ち読みしただけなので何ともですが、全三巻、本当にマトモにかかっていこうと思ったら、一番有効ではありそう。 確か巻末に人名索引もあったので、興味ある人のエピソードだけを拾い読みすることも可能。 |
『捜神記』 | 干宝 著/竹田晃 訳 平凡社ライブラリー |
代表的な六朝志怪小説。収集した説話集……というか、干宝自身がめちゃめちゃ信じてる気配濃厚。 東晋時代の選、しかも干宝の出身地もこっちなので呉の話が多く、既に怪奇大国の様相を呈している。 諸葛恪が大活躍。朱桓や于吉も出るぞ。蔡ヨウや曹操、鍾、賈充なども登場。孫権一家は勿論のこととして。 訳者、孫峻に殺された「朱主」を正体不明、「この話によると孫峻の侍女であったのかもしれぬ」などと寝言を言ってるが、孫権の次女、孫魯育(朱公主)であることは間違いないかと。彼女を改葬しようとする孫晧は、やっぱりそんな悪人には思えない……。 あとめちゃくちゃ気になった記述。「天帝は、趙公明、鍾士季など三人の将軍を遣わし、それぞれ幽鬼どもを督励して、下界の人の命を奪わせる」 ……趙公明と鍾会っスか!!濃!なんと濃ゆいメンツ……って、趙公明をフジリュー版で想像する私がダメなのか……。しかしなんとまあ貴公子チックな死神であることか。 個人的お気に入りは、335「針鼠」(笑った)と、267「首無し太守」(泣いた…)ですね。 |
『後漢紀』 | 袁宏 著/中村史朗・渡邉義浩 訳 明徳出版社 |
やっぱり明徳なのでペラい(笑)。とはいえ、桓帝以後、特に党錮とか肉刑論争とかの三国志的に重要な箇所を中心とした抄訳なので、結構面白い。 ……袁宏の主観入りまくりの記述なので、荀ファンの管理人は読んだ瞬間ムッカー!と大激怒しましたが(苦笑)。 渡邉氏の解説はかなり面白かったですけどね。潁川閥の法治志向が、曹操政権のバックアップの動機かな、という気がしてるんですが。 |
『三国志演義』 | 羅貫中 著/立間祥介 訳 平凡社 古典文学大系(全2巻) |
ウチの演義は平凡社版です。講談社とか岩波とか、最近では井波律子も訳本出してますが、元々ウチにあったのでそう何種類も要らんかと。 父が持ってたんですが、母ではない女の署名が入ってるのがかなり気になります…(怯)。 正史と並ぶスタンダード。こんな後ろの方で紹介すんなといったかんじですが。 エピソード的にも演義のものの方が有名ですな。江戸時代からのベストセラーで、近代以降も吉川らの協力で支持者を増やし続け。無双も演義ベースだし。シミュレーション三国志シリーズは徐々に正史化しつつありますが(論文アイテムとか)、でも演義オリキャラの周倉も貂蝉も出ちゃうよ。 正史+講談+民間伝承。ホント7割ウソ3割とも言いますが、演義があったからこそこーゆー広まり方したんだろうと思うと、良きにつけ悪しきにつけ立役者なんだろーと思います。 ……孔明を超人にしようとして、間違えて極悪人にしてしまった気配が濃厚なんですが。あとヒゲ魔神の悪霊化。 |
『三国志平話』 | 二階堂善弘・中川諭 訳注 コーエー |
演義の原本ともなった元代の通俗小説。つーか講談の脚本集みたいな。本場中国では早くに散逸し、日本でのみ現存。『遊仙窟』とか、そーゆーパターンは多い。 三国時代の戦乱の原因を、劉邦に殺された韓信・黥布・彭越の復讐…にする伝奇的コンセプト。 演義と比べ、より民衆的。より荒唐無稽。より張飛大暴れ(笑)。ことあるごとに張飛。国まで建ててしまう張飛。このままの勢いでは個人で天下取ってしまいそうな張飛…。 その分米男やヒゲはそこまで神格化されてないので(米男神仙呼ばわりだが)、多少は安心。周瑜も演義と変わらぬ短気野郎にされてるとはいえ、矢を借りてる当事者なのでまだマシか。 謎なのは統。周瑜とほぼ義兄弟関係で、その死を劉備陣営から隠そうとする。…かと思えばとっとと劉備に仕官。…かと思えば四郡誘って謀叛。…かと思えば魏延とか連れて再投降。結局何がしたいんだ、アンタ。 原本は色々史実的な誤り&人名の間違いが多いらしいが、この本はページ下段に一々丁寧な注釈が付いてるおかげで読みやすい。ブラボー。 |
『漢・魏・六朝・唐・宋散文選』 『歴代笑話選』 |
平凡社 古典文学大系 |
■『散文選』は、例の人々の手紙とかが載ってたり。孔融とか仲長統、曹兄弟や呉質辺り。ある個人の作品を網羅してる訳じゃないから専門性は乏しいが、とっかかりor雰囲気を楽しみたいとかだったら、色々載っててかなり楽しい。 編訳者:伊藤正文・一海知義 ■『笑話』、直接的には関係ないんだけど、「笑府」が載ってるから……。「笑府」、作者は明の馮夢竜。落語の「野ざらし」の元ネタがある…と言いつつ、その落語の方知らないや(汗)。横光の「おもしろゼミナール」にも紹介されてたので、結構有名?楊貴妃の代わりに張飛がやってくる話。 この話に限らず、中国の笑い話はお下劣エロ系が多い。つーか猥談。ホモネタも妙に多い……。受の妻が発した「夫の夫」には目からウロコでしたが(笑)。 編訳者:松枝茂夫 |
他、風の噂とか本になってないのとか、そんなの。 |
『晋書』。未だ日本語完訳は出版されず。明徳出版社のは(越智重明だし)、あんまり役に立たないし……。 現在、サイト「解體晉書」様(http://www.jin-shu.com/)で地道な邦訳作業が進行中ですが、まだまだ微々たるものですし……早くどこかで出版されたりしないものでしょーか。 司馬一族とか、荀とか、晋書読まないと詳しい所はよくわかんないですもんねえ……。 蛇足ながら、サイト様で正史読もうと思ったら、 『後漢書』は「後漢三国家頁」様(http://www2u.biglobe.ne.jp/~dnak/sangoku/sangoku.htm)←完訳ではなけれども、三国志関連人物に関してはかなり網羅 曹植の詩文なら「私家版 曹子建集」様(http://www5c.biglobe.ne.jp/~sikaban/index.htm)が、 かなりお役立ちではないかと思う次第。 ※無許可紹介なので直接リンクはせぬつもり。各自コピペして飛んで頂きたく。 |